モーター勝率が高いレーサーを見落として痛い目を見た事はありませんか?
当節活躍したBクラスレーサーが次節では大きく成績を落とす姿をご覧になられたことはありませんか?
これらは、レース場とレーサーの相性やフライングによるスタート恐怖症などもありますが、ほとんどは使用するモーターが原因となる事が多いです。
ボートレースのモーターは、競馬で言うところの競走馬と同じ位置づけです。
競馬の騎手が一流でも競走馬が三流ではレースに勝つ事は難しいのと同じで、レーサーが一流でもモーターが低勝率の場合、着順を落とす事が充分に考えられます。
特にアウトコース艇に位置した場合、うまく展開をついて上位に食い込んでも競り合いで着をキープ出来ずに競り負ける事も珍しくありません。
では、どのようにモーターを確認すればよいかということになります。
この記事ではモーターについて基本的な事を説明して行きますので、まずはボートレースに使用するモーターとはどのようなものなのかをご理解頂けると嬉しいです。
では早速・・
モーターの基本スペック
メーカー
全国24場のレース場で使用されているモーターは全て同じです。このモーターを一手に製造しているのがヤマト発動機株式会社です。
モーターのスペック
水冷式縦型直列2気筒の2サイクルガソリンエンジンで、排気量が396.9ccになります。以前使用していたモーターと比較して出力低減モーターとも言われます。
このモーターの特徴を説明すると非常に長文となるわりにレース予想にはあまり関係ない情報になるので、プロペラを回す過程以外の説明は割愛します。
では、どのようにプロペラを回しているかというと・・・
- 外気を取り込み霧状の燃料と混合し内燃室に送り込む
- 点火プラグで内燃室内にある燃料に点火して爆発させる
- 爆発で内燃室下部にあるピストンが下へ押し下げられる
- ピストンに付いているシリンダーへ力が伝わりクランクを回す。
- クランクについているシャフトが回る。(シャフトの力は縦方向)
- シャフトについているギアケースで横方向に変えてプロペラに伝える。
爆発で得た力を回転に変えてプロペラ伝え艇を走らせています。
この力の伝達がうまくいかないと回転が落ちて思う様なスピードが出ません。
船足が悪い場合、レーサーは自分の感で部品交換をして調整をおこないます。
モーター整備とは?
前検日に抽選で引き当てたモータの各部を調整してレーサー好みの足色に変えていくんですが、この時に、どうしても自分好みにならない場合があります。
その原因がレーサーの整備力の場合は地道な努力しかありませんが、モーターの部品にある場合は交換する事が出来ます。部品交換を行った情報は、展示タイムやチルト角度と同じように直前情報で公開されます。
基本的には、部品交換はモーターのバランスを崩す可能性もありますので、リスクが高くレーサーは最後の最後に決断を下す事になります。
実際に、部品交換を行っても舟足が上向かず成績が上がらない場合もあります。
ただ、成功すると一気にエースモータークラスの舟足になり成績が急上昇する事もあるので、一か八かの賭けで行うこともあります。
では、どのような部品を交換できるのかと、交換した場合の改良される可能性がある点を説明していきます。
交換を行えるパーツ
電気一式
点火プラグに送る電気を発生させる装置一式です。1分だけ交換する事は構造上出来ないので交換する場合は、すべて交換します。
立ち上がりが悪い場合に、交換する部品です。
ピストン
爆発で発生した力を伝える最初の部分です。
ピストンの動きが悪かった場合には、爆発力を浪費します。
必要以上に遊びがあると、爆発力をロスします。
転覆して歪んだりズレた場合や回転数が上がらない時に交換する事が多い。
ピストンリング
ピストン一つにつき2個ついている部品。
ここもピストンと同じで抵抗が大きい場合には、爆発力を浪費させる。
必要以上に遊びがあると、場初力をロスします。
パワーがほしい時に交換する部品になります。
キャブレター
霧状の燃料の噴出を調整する部品です。
外気と混ぜて混合気を作って点火プラグで爆発させて力を作る上で、燃料の量の調整は重要になります。
立ち上がりを良くしたい時に交換する部品です。
シリンダーケース
ピストンが入っている部品。
摩耗により内部の形状が変化していると、爆発力をロスする。
出力を上げたい時に交換する部品ですが、レーサーの労力がかかる事と改良されるかは不確実なのでレーサーにすると一か八かの判断になる。
クランクシャフト
ピストンで発生した力をギアケースに伝える部分。
艇の動力の心臓部分。この動きが悪いとモーターの能力を充分に引き出せない。
事故によるゆがみなどが生じると変えるが基本的には交換しない。
ここを交換する場合は、何をやっても舟足が改善しない最悪の状況と考えてよい。
ギヤケース
クランクシャフトの回転方向を変える部品です。
クランクシャフトの回転をプロペラに伝える部分になるので、上手く動かないと動力が伝わらない。
足色を変えたい時や事故で破損した場合に交換されます。
キャリアボディ
排気をつかさどる部品です。
排気が上手くいかないと、モーターの爆発力が低下し出力がでません。
モーターのパワーがイマイチの時に交換する事があります。
出力がほしい時に交換します。
プロペラ
推進力を生みだす末端についている部品です。
以前はレーサーが自分で所有する事が認められていましたが、今は抽選で引き当てたモーターについている物を使います。
破損した場合に交換します。この部品を交換する事は非常にまれです。
チルト角度とは?
各レースの直前情報に『チルト●●度』と書かれたりアナウンスされています。
このチルト角度とは、ボートについているモーターの角度をさします。
チルト1度や3度の様に角度が高いと、プロペラが水面に近い位置にありモーターを動かすと、水の抵抗が少ない状態になるので非常に加速が良くなります。
但し、加速が良いだけにグリップの効いたターンをするのが非常に難しくなります。
逆に-0.5度の様なチルト角度が低い場合は、プロペラ部分が水面から遠くなるのでグリップの効いた動きが可能になります。加速時やターン時の安定感が増します。
基本的には・・・
回り足を消して伸び足がほしい時にチルト角度を高くします。
伸び足を消して、出足や回り足がほしい時にチルトを下げます。
これはレーサーの好きな乗り方だけではなく、モーターの特性やコースの状況によってレース毎に変更する事が可能です。
以前は、チルトを上げて伸び足を重視する時期もありましたが、2019年現在ではほとんどのレーサーは-0.5度でレースを行っています。
チルトを上げてきた場合には、まくりやまくり差しを狙っている可能性を考えましょう。
安定板とは?
艇を安定させるためにプロペラ付近上部に装着する金属製の板です。
審判長・競技長が波高や風速、潮位を見て危険と判断すれば使用する事になっています。
レースを見ていると波高5cm、風速5m、潮位満潮の条件をクリアすると装着が検討されているようです。
転覆事故のリスクを低下させるために使用するので、装着すると艇のスピードが落ちてターンがしやすくなります。
この事から一般的には、まくりが決まりにくくなり、装着後はイン有利と言われています。
これは、あくまでも一般的な話でレーサーの実力と波乗り技術があれば、まくりを決められないわけではありませんので、盲信には要注意です。
安定版を使用しても危険があると判断した場合には競走距離を1200mに減らし、それでも危険な場合は中止となります。
かなり重要になるプロペラ調整
いきなり答えからいってしまえば、ボートレースのモーターは、プロペラ調整がかなり重要です。
あるレーサーが、『1mm調整を間違えるなんてとんでもない話。そんな間違えはあり得ない。』というくらい、神経を使って細やかな調整で船足を管理しているようです。
少々話が変わりますが、レーサーが自己所有のプロペラを使っていた時代には、プロペラ調整を研究するグループがあり、休日返上でプロペラを叩き調整技術を磨いていました。当時言われていたのは、『1年目からプロペラを上手くたたく事は出来ない!』でした。
2019年現在では、レーサー全員が抽選で引き当てたモーターについているプロペラを使用します。調整時には各支部からゲージが配布されているので、それを利用して叩いていきます。
簡単に言うと、以前は職人芸だったプロペラ調整にゲージというマニュアルが出来たという事になります。
ここで少々考えてください。
金属を叩いて加工した経験のある方なら分かると思いますが、全体を見ながら調整しないと思った形状にする事はできません。いくらゲージというマニュアルがあるとは言うものの1年目のレーサーが完璧にできるかという事です。
ベテランレーサーはすでに職人芸の域に達しており、相当な事がなければモーターのコンディションと自分のレーススタイルを考えて、プロペラの調整が可能です。
新人レーサーがなかなか1着にならない理由は、このプロペラ調整の技術力の差も原因になっていると考えられます。
モーター調整で出せる2大特徴とは
モーターの調整を行うと特徴を出す事が出来ます。
これを足色といい、大きく分けると2タイプあります。
- 伸びタイプ
- 出足タイプ
それぞれを説明すると・・・
1、伸び足タイプ
直線での加速に重点を置いたタイプ。最高速度が出るように調整を行います。
加速できていれば引き波を2本程度なら余裕で超えていくモーターもあります。
2、出足タイプ
立ち上がりに重点を置いたタイプ。ピット離れやスタート、ターン時に有利。
このタイプは基本的に深い位置からのスタートでも出遅れるほどの加速不良になる事は無い。
どちらが良いという事は無く、レーサーの得な乗り方やコース状況、進入コースによって調整する事が一般的です。
いずれかが他のモーターよりも秀でていれば、超抜モーターやエースモーターといわれる成績を残す可能性があります。
モーター成績で抑えるべき事2点
ここまでで、モーターにかかわる基本的な事は理解してもらえたと思います。
では、どのような基準でモーターを見ればよいのか大まかに言うと下記の2点になります。
- 連対率が40%を超えているか。(試用期間3カ月経過が条件です。)
- 優出と優勝実績があるかどうか。
それぞれ説明します。
連対率が40%を超えているか。
連対率が40%を超えているモーターは、何か特徴があると考えて問題ないと思います。
その特徴とは・・・
- 出足が抜群でスタートを多少出遅れても取り返せる。
- 伸び足が抜群で、直線で他を圧倒する加速がある。
- 飛び抜けた足はないが、全体的に他のモーターよりも良い。
などなど。
この様なモーターをB1ランクの実績のあるベテランレーサーが使用すると、予選突破や優出など、勝率を凌駕する成績を残したりします。又、A1ランクの実力上位者が使用した場合には、オール1着の完全優勝も見えてきます。
但し、当節使用しているレーサーの実力と前節以前に使用しているレーサーの実力が、かけ離れている場合は違う結果になります。
例えば、新人レーサーで実績も実力も不十分のなレーサーがこのモーターを使用した場合は、良くて節間に2から3回程度3連対する程度です。最悪の場合は、全く絡んでこない事もあります。
乗り手によって判断は必要になりますが、目安としては予想に利用できる数値になります。
優出と優勝実績があるかどうか。
準優勝戦までならレーサーの実力で何とかなりますが、優出となると当節好調者同士のレースになり、全員が勝負駆けのイメージで臨むので、簡単ではありません。
更に、優勝ともなればもう一つ難しいと言って良いでしょう。
その優出を数度経験し、優勝の実績のあるモーターは機力があると判断してよいでしょう。
SG常連でトップクラスのモーター調整の能力があるレーサーばかりが使用しているモーターであれば、モーター自体の能力とは言えないですが、そんな事はあり舞えませんので、相当実力が無いレーサーが乗らない限り、節間上位に食い込む可能性があると考えても良いと思います。
まとめ
モーターが競走成績に影響し、レーサーランクを凌駕するのはレーサーの得意な乗り方とモーターの特徴が合ったときです。
たとえば、せめていくレーススタイルでまくりが得意な新人レーサーが伸び足型の好成績モーターを引き当てた場合は、引き波の無い外側をまくって攻めてくるので減速する事が少なく、上位着に入る可能性が高くなります。
同じ伸び型のモーターを、差し専門のベテランレーサーが引いた場合には、上位着になる事はあるとおもいますが、本来モーターが持っている力をレース中に十分に引き出す事は難しいと思います。
競馬には人馬一体という言葉があり、この状態になると実力以上の走りをして高配提供をしたりします。ボートレースも同じで、人機一体となれば調整にモタついている高ランクレーサーを抜き去り高配提供となる事は多々あります。
これは出走表のモーター成績だけである程度判断する事が出来ますが、そのレーサーのレースを見て実感して頂く事が一番理解できると思います。
好都合な事に、ボートレースではほとんどのレーサーが1日2回出走しますので、1走目で状態を見ても2走目で勝負をする事ができますし、最終日で無い限りは翌日も有効な情報となります。
是非予想を行う際はモーターの情報にも目を通して、機力の判断を行ってください。
まとめ
- モーターはレース予想で重要なファクター。
- 公平を期すため全員同じ型のモーターを使用するが、個体差が出る。
- モーター調整が上手くいかない場合は部品を交換したり、プロペラの調整を入念に行う。
- プロペラの調整ひとつで舟足が変わる。
- 注意するのは連対率40%以上と優勝戦進出・優勝実績があるかどうか。
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